書へのアプローチ

“努める”

元本院顧問 花田峰堂(1918~2007)

 昭和23年、書道が日展に参加、関西書壇に提々とした大きな波紋が喜びと不安に渦巻きました。当時トップクラスの先生方でも審査を受けなければならない対象となる由。出品諾否に相当の抵抗があったようです。 でも作家としての姿勢と毅然とした態度を貫き挑戦、見事な成果を収められました。

 この頃、辻本史邑先生曰く、これからの書は各自の個性や意図感情を尊重し、その結果を展覧会に問うもので成功が重要ではなく、重要なのは努力だと申されました。 日々の臨書を怠らず書く、考える、探求する事が第一と力説、自運の創作力と鑑賞眼の育成を目的とした指導に全力を傾注されました。

 今日各会派長の先生が鋭意、営々としてこれが実践に努め卓越した書芸術の完成と強力な書界の地盤を形成された事実を犇々と感じています。 常々先生方の熱心なご指導と愛情で『こう書いたら』と示される書が何時しかお手本に変身したようです。手本を真似るのか、学ぶ為のお手本なのか認識を新たにせねばなりません。全力投球で展覧会に出品する経験は入落を別に貴重な体験を得るものです。その努力が堆肥となり、 やがて花開き実を結ぶものと信じています。

<平成8年(1996)9月10日発行、会報94号より>